青の空 22話 「バンド結成」




最近は部活も終わったし、よくギターを弾いている。
貰った楽譜を見ながら曲に合わせて弾けるようになっていくのが楽しかった。


夏森の影響でアコースティックギターが欲しくなったので、お母さんに無理言って買ってもらった。

音楽をやろうとしている事に対して少しは怒られるかなと思ったが、意外と何も言われなかった。



「おい、見ろよコージ。買ってもらった」



「おーすげー!ピカピカじゃん!いいなー、弾かせてよ」


「傷つけんなよ」


「ほう。おれの父ちゃんのやつより、ちょっといいな」



「そんなオンボロと一緒にすんな」


「あぁ!ナメんなよ!父ちゃんの魂がこもってんだよ!」



近くの公園で適当に2人でギターを弾いていた。



「おーーい!」



遠くから声がする。


「うん?あれは…あの饅頭みたいな顔は…!?」




最近近所に引っ越してきた、コージと同じサッカー部の岡本尚憲(おかもと しょうけん)だ。



「あ、そっか新しいお前んちこの辺だもんな!」



「そうそう。なに、お前らお洒落な事やってんの?」


ボールを持ってサッカーをする気まんまんだったはずだが、ギターに興味を示している。



「おう。今おれたち、これでモテるために練習してんのよ」



「まじかよ!ちょっとおれにも教えろよ!」



オカモトはサッカー部ではエース、おれとコージと違ってそこそこ勉強もできる。
ギターも想像以上に飲み込みが早かった。



「おい、楽しいな!」




それから3人でよく過ごすようになった。

夏森の家に入り浸り、楽譜を片っ端から印刷して持って帰ったり、毎日ギターを弾いていたら、みんなそれなりに上達した。




その日もまた、3人で夏森の家にいた。



「なぁ、ノブ。弾けるようになったものは良いものの、どうやったらモテるの?」


オカモトが笑いながら聞いてくる。



「うーん、やっぱコンサートしなきゃな」



「どうやったら出来んのよ?」




「あ、そういえば隣町にアマチュアミュージックフェスティバルっていうのがあるよ」



夏森が横から入ってきた。



「なんなのそれ。モテるの?」



「モテるかどうかは知らねえ。でも多分誰でも出れるんじゃないかな。パソコンで応募してみるか?」



「おおー!さすが夏森!早速しよう!」




「でも、お前らギター3本でなにやるの?」




「え?」



「…」



何も考えていなかった。



「お前ら、大体グループだったらベースとかドラムとか必要だろうよ」




「え、じゃあおれベースやりたい!かっこいいじゃんベース!」

オカモトは真っ先に名乗りでた。


「いんじゃない?ノブはギターの方がいんじゃない?一番長くやってるし。じゃあおれがドラムか!」


ペンを二つ持ってドラムの真似をしながらコージが言う。


「じゃあまぁそれでとりあえずいくか!」



何かを一から始める事。何かが始まっていく事を想像して話しているととても楽しくて、充足感があった。




「お~~。いんじゃない?楽しそうだな。あとはバンド名か」


まとめ役みたいになってる夏森が言う。



「バンド名か~」



「なんだろうなー、オカモト何かない?」




「いいの思いついた!!BOM4は?」



「どういう意味?」




「B バンドで O おれたち M モテたい 4 よう」


「…ちょっとダサくない?」



「まぁ、意味は間違ってないよな」


腑に落ちない部分もあったが、他に候補もなかったのでBOM4に決まった。


BOM4
ボーカルギター ノブ
ベース オカモト
ドラム コージ


とまぁ、こんな感じだ。


「早速おれ、誰か知り合いにベース持ってる人いないか聞いてみるよ!」


「ドラムはどうしようかな~」




おれたちはバンドを結成した。


ボーカルでギター。いわば主役だ。


今までに無いような高揚感を感じた。


練習がとても楽しかった。


いつかあの人にも見てもらえたらな。



ステージに立つ自分を想像して、晴れ渡った青空のような気持ち良さを感じた。

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