青の空14話 「不謹慎」



ボールをつく低い音と、バスケットボールシューズが床と擦れる甲高い音が体育館に鳴り響いている。


今日も放課後、体育館で汗を流していた。




「よーし。お前ら、中総体がいよいよ一週間に気合入れてけよ!」





「はい!」




「三年生は負ければ終わりだ。勝ち進んで少しでも長く、バスケをしよう」





「はい!!」






監督の激励に選手達は気合が入る。






厳しい練習にもすこしずつ慣れてきた。





「早く試合出たいよな〜」





ザワがレギュラー陣のゲームの得点板係をやりながらつぶやく。




「3年が抜けたらザワはけっこう出るんじゃない?」





「どうかね〜」









「おい!!石澤!!こっち2点入ったぞ!!」



先輩が怒鳴る。





「あ!すいません!!」






「...試合近いから先輩達ピリピリしてんね〜」





「ああ、こえーよ...」







反対側の女子バスケ部のコートで何やら人が集まっている。





よく見ると誰かが倒れているようだ。





「あれ、長谷川さんじゃない?」





ザワがそう言うと同時に長谷川さんが2、3人に抱えられてコートを去っていった。




「大丈夫かな?」





「ノブお前超心配そうじゃん」





「心配だろ?試合近いんだし」




運動能力の高い長谷川さんはチームのエースだ。



この間の練習試合でも大活躍だった。



エースを欠いたら厳しい戦いになるだろう。



長谷川さんにとっても最後の公式戦。もし出れなかったら本人が一番悔しいだろう。







「気持ちはわかるけど今はこっちに集中しとけ。先輩に怒鳴られんぞ俺みたいに」






「あぁ、そうだな」







怪我の容体が気になったけどザワのおかげで、無事怒鳴られずに練習を終えた。





練習が終わりコートにモップをかけている時、長谷川さんが戻ってきた。





「長谷川さん、大丈夫なんですか?」






「うん、軽くひねっただけ。2、3日すれば練習にも復帰できると思う!」





「そうなんですか、よかった」





「なにノブ、心配してくれてるの?」



長谷川さんがニヤッと笑う。




「えっ?あ、いや試合も近いし、そりゃあ...」





「ありがとう。優しいじゃん」





「あ、はい...」




照れ臭くてうまく言葉を返せなかった。







「大丈夫だよ。来週の中総体、絶対勝ってみせるよ」






「さすが長谷川さん、男らしくてかっこいいっす!」






「おい、誰が男よ」









「おいノブ早くモップ終わらせろよ!」




ザワがテキパキ片付けしながら言う。







「あっ悪い!じゃあ長谷川さんお大事にどうぞ!」





「ふふっ。お医者さんなの?ありがとう〜」










モップをかける足取りは軽い。







長谷川さんと話せるきっかけが出来て良かった。








不謹慎にもそう思う山本少年であった。









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